日米独先端科学シンポジウム(Japanese-American-German Frontiers of Science Symposium)が、2017年9月21~24日までドイツで開催され、参加するにあたり幾つか思いついたことを、若い人に向けて書きたいと思いました。
先端科学(Frontiers of Science: FoS)シンポジウムは、学振が主催するシンポジウムであり、学振のHPによれば、「日本と諸外国の優秀な若手研究者が様々な研究領域における最先端の科学トピックについて、分野横断的な議論を行う合宿形式のシンポジウムです。シンポジウムに参加した若手研究者がより広い学問的視野を得るとともに、既存の学問領域にとらわれない自由な発想を更に発展させ、新しい学問領域の開拓に貢献し、また、次世代のリーダーを育成し、ネットワークを形成することを目的としています。」ということですので、招待されるのは名誉なことのようですが、分野横断的ということで、Narrow-mindの私には消化できないことが強く予想され、何年か連続で折角のご招待を断ってきた。一方で、このシンポジウムの参加資格には年齢制限があるようで、そのリミットが45歳。そろそろそんなお年頃に近づきつつあり、折角なので、1度位は行ってみようかしら?と、随分悩んだ末に参戦することに。そして、3日間の日程のAgendaを見て、しばし、気絶。“Rapid Climate Change”, “Gravitational Waves”, “Alternative energy”, “Machine Learning”, “Sleep”, “Socioeconomic Inequality”の6 session。Narrow-mindな私には正直、どれも、興味が沸かないし、そもそも聞いたところで、確実に何も理解出来ないことは明らかで、やっぱり、断れば良かったと、ひたすら後悔した。そして、大抵、こういうところに参加する輩というのは、“I am really excited to be here.” とか、“tons of fun, why not?!”とか、目をキラキラさせた、どこから見ても素敵オーラ全開の輩であることは確実である。そんな人々と数日、朝から晩までどこかに閉じ込められて、3食を共にすることを考えたら、心の中は、負の感情で満ち満ちている私は、益々、鬱々とするしかないのです。そして、実際に、ドイツはBad Neuenahrに到着、まあ、予想通りの人たちの集団(日本30人、アメリカ30人、ドイツ30人)に混ざり、それでも、「がんばれ、私。。」と言い聞かせて、心を落ち着かせるのですが、少なくともこの科研費作文期間という激務シーズンに出張したからには、絶対に何か得て帰ろう!とそれだけは心に決めて臨みました。さて、セッションの前に、トイレに行っておこうと、トイレ表示を見ると(図1)、
“Herren”と“Damen”の文字。大学で1年間ドイツ語を習ったにもかかわらず、全く覚えていない(汗)。仕方ない、適当に入るも外れ(爆)、目撃されなかったから良かったけど、見られていたら変態扱いですね。気を取り直してセッションに臨みます。セッションは分野横断的であることに対して手厚い配慮がなされ、Jargon禁止、イントロ重視が徹底されており、非常に良くOrganizeされ、私でも分かったような気にさせていただけて、実際に面白く、お世辞抜きで素晴らしいものでした。Organizerの先生たちの素晴らしさがヒシヒシと感じられます。特徴的なのは1セッション120分うち、質問時間が50分以上という長い時間を占めることです。そして、座長は、“To receive many questions, questions should be as short as possible, and speakers, please respond it as short as possible”などと、毎セッションの度にアナウンスします。実際、自分の専門外のことに対して、どうしてそんな質問なんて出来るのよ?!と思うのですが、質疑の時間には、会場から同時に大量の挙手が起こり、質問も次々と、しかも、質問ですら何か面白い、会場を笑わせるようなWitを込めるというノリがあります。これは凄いところに来てしまったものだ、、、と思いつつ、セッションはあっという間に過ぎます。さて、2日目、自分の発表はポスターだけで、それくらいは楽勝♪と思っていましたが、ポスターセッションの前に、Flash talkというコーナーがあり、90秒で自分のポスターの内容を皆さんの前で話すというシステム。90秒、、、、って短い、短い、短すぎる、でも、皆さん、次々と素敵にプレゼン、Flash talkのセッションは淀みなく進行します。自分の番、、仕方がないので、記憶関連のシナプスをAS-PaRac1という新技術で可視化し、光操作するという市民公開講座でやったような内容を英語で80秒、そして、“If you have the very embarrassing memories, maybe during adolescence, which you’d like to erase, please stop by my poster”と鉄板のギャグをぶっこむと、やはり、鉄板ギャグは抜群の安定感で笑いが取れる。一体、どれだけみんな羽目を外してるのかしらと想像しつつ、ほっと、一安心。そして、流石にポスター発表くらいはNo stressで出来るので、無事に終わり、食事の時間です。何やら素敵なご飯が毎食頂けるようですが、英語で、しかも異分野の人々と、もう何を話せば良いのでしょうか(不安)?という感じですし、むしろ太り気味の私は、ダイエットも兼ねて、食べないで部屋に引きこもっていようかと本気で思うくらい苦痛です。しかし、それも、どうかと思うので、頑張って素敵ご飯を食べ、ワインを飲み、Socializeするわけで(図2)、
もう時差ボケもあるし、ひたすら疲れて、疲れて、もう疲れるわけです。一体、人生はいつまでこんな疲れることを繰り返さないといけないのだろう、、、と呆然としつつも、ふーん、待てよ、と思うこともありました。はじめて海外の学会に行ったときはD4のGordon conference、場所はアメリカのどこか。その時には、同じ研究室の人が4名も同行したこともあって、ラボメンとつるみ、正直、異文化コミュニケーションも全く出来ないに等しいレベル、ポスター発表すらシドロモドロで行い、ましてや口頭シンポの質疑応答時にマイクを持って質問なんて絶対に出来なかったなあ、、と12年前のことを思い出しました。そう思えば、ずっと自転車操業のようにギリギリの余力で、首の皮一枚の人事・予算繰りの中で、この業界で何とかしがみついて生きてきた中で、自分では気づかないうちに自然に色々なことが身についてきて、今、この瞬間を楽しめる余力が熟成されてきたのだと思いました。こんな駄文を書こうと思った契機も、必死な思いで一瞬一瞬をStruggleしている若い人たちに、そういうStruggleはいつの間にか身について行くものだよ、安心して、もがきなさい、ということを伝えたいと思ったからかもしれません。そんなことを考えながら、ライン川クルーズで飲むビールの美味しいこと美味しいこと、そんなエクスカーションも楽しみながら、3日間のカンファレンスはあっという間に過ぎ、気付けば、羽田空港に到着。物理から経済学まで幅広く集められた30人の若手研究者たちは、すっかり打ち解けて、Baggage Pick upで止まることのないお喋りに話が弾んだ後は、ある人は国内線乗り換えに、ある人は京急に、ある人はモノレールへと散っていくのでした。個人的には、Machine learningに精通した知り合いが何人も出来て、画像解析にMachine learningを組み込みたいという野望が実装化できそうで、予想外の実利もありました。そういう損得勘定だけでなく、やはり、研究というのは本当に面白いもので、大変でも絶対に辞めたくない、この世界にしがみついていたいとの思いを新たにできたことは新鮮でした。やっぱり参加してよかったと思いつつ、科研費書かねば、、、、でも疲れたから明日からにしようと♪と思い、新幹線ではもうグビグビ飲み始める。こんな駄目人材でも意外とやっていけるのものね、と思いつつ、しみじみと考えた末に必須な資質は、2つ。最低限の英語力と人懐っこさ。この2つがあれば、この世界では何とかSurvive出来るのでは?という思いを強めたのでした。